★★★オクムラユウスケLIVE情報!!!★★★9月25日(日)『ヨコチンロックフェスティバル2011』@福岡・VooDooLounge■■■11月4~5日『Anus30H』 @広島・mugen5610
倒れこむようにその人は「カサカサ」にやってきた。
ここへ来る途中で激しく転んで怪我をしているという。
ずいぶん疲れた様子で、歩くのも、じっとしているのでさえも辛そうだ。
痩せぎすで長身の体を頼りなくソファーにもたらせて
日本人離れした顔立ちで「痛いわぁ」と
関西弁で喋るその人は「ケンさん」と呼ばれていた。
それからケンさんは2、3日ほど「カサカサ」に泊まっていた。
ある朝、姿を見かけないと思ったら、
どうやら荷物をまとめて出て行っちゃったらしい・・・と
宿主のヒデさんが笑いながら話していた。
無銭宿泊されたことより、
「ケンちゃん、あんな体で大丈夫かな~」と心配するヒデさん。
ケンさんの事はよく知らないが、
話を聞く限りではかなり破天荒な人生を送ってきた人らしく、
昔は有名な一流料理人だったけど、麻薬中毒になってしまい何度も捕まったりして、
それでも親しまれやすい性格なんで、いろんな人から慕われ、
さらに女性からもすごくモテるもんだから、
お金にもさほど不自由なく自由奔放に暮らしてきたんだという。
確かに一見近寄りがたい雰囲気はあるけど、不思議と怖い感じはしなかった。
その日の昼過ぎ、我々が買い物から帰ってくると
深刻な顔でヒデさんが電話をしていた。
「ケンちゃんが血を吐いて病院に運ばれたらしい。
心臓が止まってるみたいや・・・」
それからヒデさんたちは病院に向かった。
報告によると生存確率は10%。心臓は動き出したが意識は戻ってないという。
絶望的な状況の中、一夜が明けた。
翌朝、昨日の状況を詳しく聞いた。
吐血して病院に運ばれた時はまだ意識はあったらしいが、
病院内でたらい回しにされた挙句
「薬が無いから薬局行って買ってきてくれ」などと
信じられない事を医者から言われ
4、5時間後に力果てたケンさんは「グラシアス」と一言残して
心臓が止まってしまったという・・・
早朝に再び病院へ行っていたヒデさんが帰ってきた。
「ケンちゃん意識が戻ったでー!」
その場にいた一同が驚いた。
「しかも、生存率が60%まで上がって、だいぶ肝臓がやられてるけど
命に別状はないやろーって!」
飛行機で駆けつけた友人や恋人と話もできているようだった。
みんなの顔に安堵と笑顔が戻った。
夜、病院に泊り込んで付き添うケンさんの友人と恋人に、
ヒデさん達がお弁当を作って、
俺と奥さんとチャーリー(同じ宿の友人)の3人で持っていった。
病院の前で待っているとケンさんの友人がやって来た。
「さっき逝っちまったよ。。」
え!?
「いま、霊安室に運ばれていったよ。。」
あまりにも突然すぎて何も言葉がでなかった。
最後は自分で酸素マスクを剥ぎ取り、しばらくして心臓が停止したという。
トボトボと宿に帰りながら、
命が尽きる直前にほんの少しだけすれ違った「ケンさん」のことを想った。
ずいぶん破天荒な生き方をしてきたみたいだけど、
最後は友人や恋人に見守られながら亡くなったのだ。
しかも、一度死の淵から生き返って、ちゃんと別れの挨拶をするかのように。
それはまるで、良くも悪くもこれまで生きてきた物凄く密度の濃い人生が
決して間違いではなかったんだと、最後の最後に言ってくれてるみたいで
不謹慎かもしれないけど、少し胸が熱くなった。
「ロックスターみたいだなぁ」とチャーリーが言った。
俺もそう思った。
きっと「ケンさん」の数々の伝説はこれからも人から人へ語り継がれるのだろう。
そういえば人は2度死ぬって誰かが言ってた。
1度目は肉体の死。
2度目は魂の死。
誰からも忘れ去られてしまった時、人は本当の「死」を迎えるんだそうだ。
ロックスターなら永遠に生き続けられる。
ご冥福をお祈りいたします。
「ケンさん」の人柄や伝説が垣間見れる本があります。
『メキシコホテル~ペンションアミーゴの旅人たち』
この本の中の「やさしい前科者」という章です。
いいエピソードがたくさん詰まってます。
ここへ来る途中で激しく転んで怪我をしているという。
ずいぶん疲れた様子で、歩くのも、じっとしているのでさえも辛そうだ。
痩せぎすで長身の体を頼りなくソファーにもたらせて
日本人離れした顔立ちで「痛いわぁ」と
関西弁で喋るその人は「ケンさん」と呼ばれていた。
それからケンさんは2、3日ほど「カサカサ」に泊まっていた。
ある朝、姿を見かけないと思ったら、
どうやら荷物をまとめて出て行っちゃったらしい・・・と
宿主のヒデさんが笑いながら話していた。
無銭宿泊されたことより、
「ケンちゃん、あんな体で大丈夫かな~」と心配するヒデさん。
ケンさんの事はよく知らないが、
話を聞く限りではかなり破天荒な人生を送ってきた人らしく、
昔は有名な一流料理人だったけど、麻薬中毒になってしまい何度も捕まったりして、
それでも親しまれやすい性格なんで、いろんな人から慕われ、
さらに女性からもすごくモテるもんだから、
お金にもさほど不自由なく自由奔放に暮らしてきたんだという。
確かに一見近寄りがたい雰囲気はあるけど、不思議と怖い感じはしなかった。
その日の昼過ぎ、我々が買い物から帰ってくると
深刻な顔でヒデさんが電話をしていた。
「ケンちゃんが血を吐いて病院に運ばれたらしい。
心臓が止まってるみたいや・・・」
それからヒデさんたちは病院に向かった。
報告によると生存確率は10%。心臓は動き出したが意識は戻ってないという。
絶望的な状況の中、一夜が明けた。
翌朝、昨日の状況を詳しく聞いた。
吐血して病院に運ばれた時はまだ意識はあったらしいが、
病院内でたらい回しにされた挙句
「薬が無いから薬局行って買ってきてくれ」などと
信じられない事を医者から言われ
4、5時間後に力果てたケンさんは「グラシアス」と一言残して
心臓が止まってしまったという・・・
早朝に再び病院へ行っていたヒデさんが帰ってきた。
「ケンちゃん意識が戻ったでー!」
その場にいた一同が驚いた。
「しかも、生存率が60%まで上がって、だいぶ肝臓がやられてるけど
命に別状はないやろーって!」
飛行機で駆けつけた友人や恋人と話もできているようだった。
みんなの顔に安堵と笑顔が戻った。
夜、病院に泊り込んで付き添うケンさんの友人と恋人に、
ヒデさん達がお弁当を作って、
俺と奥さんとチャーリー(同じ宿の友人)の3人で持っていった。
病院の前で待っているとケンさんの友人がやって来た。
「さっき逝っちまったよ。。」
え!?
「いま、霊安室に運ばれていったよ。。」
あまりにも突然すぎて何も言葉がでなかった。
最後は自分で酸素マスクを剥ぎ取り、しばらくして心臓が停止したという。
トボトボと宿に帰りながら、
命が尽きる直前にほんの少しだけすれ違った「ケンさん」のことを想った。
ずいぶん破天荒な生き方をしてきたみたいだけど、
最後は友人や恋人に見守られながら亡くなったのだ。
しかも、一度死の淵から生き返って、ちゃんと別れの挨拶をするかのように。
それはまるで、良くも悪くもこれまで生きてきた物凄く密度の濃い人生が
決して間違いではなかったんだと、最後の最後に言ってくれてるみたいで
不謹慎かもしれないけど、少し胸が熱くなった。
「ロックスターみたいだなぁ」とチャーリーが言った。
俺もそう思った。
きっと「ケンさん」の数々の伝説はこれからも人から人へ語り継がれるのだろう。
そういえば人は2度死ぬって誰かが言ってた。
1度目は肉体の死。
2度目は魂の死。
誰からも忘れ去られてしまった時、人は本当の「死」を迎えるんだそうだ。
ロックスターなら永遠に生き続けられる。
ご冥福をお祈りいたします。
「ケンさん」の人柄や伝説が垣間見れる本があります。
『メキシコホテル~ペンションアミーゴの旅人たち』
この本の中の「やさしい前科者」という章です。
いいエピソードがたくさん詰まってます。
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無題
ケンちゃんがメキシコで亡くなった・・・そんな知らせが私の元に届いたのは、今年に入ってからでした。詳しいことを知りたくて検索、検索の日々。サンクリストバルデラカサスで亡くなったということは分かったけれど、はっきりしたことは分からなくて・・・そんな中で、今日ようやくこの日記を見つけました。
ケンちゃんの最期が寂しいものでなくてよかった。メキシコのチンピラに絡まれて・・・なんてことじゃなくて良かった。最期にそばにいてくれる人がいて良かった。
また会いたいと思っていたのに、もう会えないなんて悲しすぎるけど、仕方ないな。
ケンちゃんの最期の様子を教えてくれて、ありがとう。
いい旅を続けてください。
いい出会いがたくさんありますように。
ケンちゃんの最期が寂しいものでなくてよかった。メキシコのチンピラに絡まれて・・・なんてことじゃなくて良かった。最期にそばにいてくれる人がいて良かった。
また会いたいと思っていたのに、もう会えないなんて悲しすぎるけど、仕方ないな。
ケンちゃんの最期の様子を教えてくれて、ありがとう。
いい旅を続けてください。
いい出会いがたくさんありますように。